二.五人称の死
先日、都内大学の医学部でゲスト講師を務めました。
講義では「死生学」をテーマとして、死に直面した人の葛藤や苦悩を体験する「死の疑似体験ワーク」に学生に組んでもらうとともに、「死の人称」の概念についても理解を深めてもらいました。
皆さんもご存じのように、人称には「一人称」「二人称」「三人称」があります。この人称の区分に従い、死の人称では、
①自分自身の死を「一人称の死」
②家族や友人など自分にとって身近な人の死を「二人称の死」
③自分にとって関係性が薄い人の死を「三人称の死」
と分類するのです。
私たち医療者が寄り添う患者さんの中にも最期を迎える方がいます。真摯に患者さんに向かい合ってきた医療者が、その死を二人称の死と捉えると、バーンアウト(=燃え尽き症候群)に陥る恐れがあります。一方で、三人称の死と捉えると、どこか他人事のような立ち振る舞いになってしまう可能性があります。
そうした事態を避けるために、医療者は患者さんの死に対し適切な距離感を持つことが必要となります。大切な患者さんの死を憂いつつも、あくまで医療の専門家であり続ける距離感、すなわち二人称の死と三人称の死の間の「二.五人称の死」として受け止めるようにするのです。
学生が医療の現場に立ち、患者さんの死に直面し思い悩んだ際には、今回の講義を思い出してほしい、そう願っています。
(当日使用したスライドより)
堀 エリカ